記憶を辿って

 

お初にお目にかかります。私、水星交響楽団では主にステージ・マネージャーなどをやっております036と申します(ちなみに本業はトロンボーン奏者です)。

今回のコンサートではマーラーの交響曲第2番、通称「復活」をとりあげるということで、この曲(と私自身の関係)にまつわる小ネタなど披露させていただきたいと思います。と言うことで第1回。

さて、私にはおぼろげな記憶がありました。それはこんな感じ。

「復活」が出てくる小説を読んだような気がする。作者は何となく覚えているけれど書名は思い出せない。今をさかのぼる事十余年、学生だった頃のとある夏、実家に帰省すべく乗った特急列車の中で読んだ覚えがある。オーケストラの編成をこと細かく書き立てていたが、その中でも何故かやたらと「ルーテ」に拘っていた。などなど。

実物があればすぐに確認できるのですが、あいにく学生時代に買った本はまとめて実家に送ってしまって手元にはなく、ならばと思って近所の書店を回ってみたものの、どうやら既に絶版になってしまっているらしくどこにも並んでいない。ということで、この年末年始に帰省した際に意を決して発掘作業を行った次第。

結果、見つけました。映画『ブレードランナー』の原作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」などで知られる作家P.K.ディックの後期作品である「聖なる侵入」(大瀧啓裕訳 創元SF文庫)がそれ。ちなみに作家名は確かに記憶のとおりでしたが、書名は自分のおぼろげな記憶とは異なっておりました。残念。

ディックがどのような人物なのかとか、この作品がどんな内容なのか、などについて書き始めると大変なことになってしまうのでここでは割愛させていただくとして、この本にはとあるキャラクターが偏愛している音楽として「復活」が使われているのです。

最初は、躁鬱の気のあるこの人物が「これを聞くと気分が良くなる」音楽として(「籐の笞のためにつくられた唯一の交響曲であることが気に入っていた。小さなほうきに似ているルーテを大太鼓に対してつかう」)、二回目はいろいろあって警官に職質を受けているこの人物が自らの「身元」を説明する中で(ネタバレ防止のためか核心をボカしたらこんな表現になってしましました)触れられます。

特に二回目は、オーケストラの編成を事細かく挙げていて、なんとなく気分で名前だけ使ってみた、といったレヴェルには止まらないディックの「復活」に対する知識の「本物」具合を感じます。(ちなみに邦訳ではbellを鈴と誤訳、ハープを「二人以上の者がハープの両側から弾く」などという意味不明の表現も見られますが)。

ディックがこの曲を作中に登場させた理由についてはいろいろ考えられますが、正統的なキリスト教の教義とは距離を置いたところで「救済」をテーマとしていることが両者に共通していたからではなかろうかというのが私の素人なりの見解。そのあたりの当否を含め、気になった方はご一読を、と言いたいところですが、前述のとおり極めて入手が難しい上に、内容的にもキリスト教一般のみならず、カバラからグノーシス主義に至る神秘主義思想までの広範な知識を背景にしているので極度に難解。事実、そろそろ発掘してから1か月になろうかという今も私はまだ再読の最中で、正直なところ読破できるものか否かについては諦めムードさえ漂ってきております。

ということで、求むチャレンジャー。この本を読んで梗概を簡潔にまとめてくださる方を募ります。特に報酬等はご用意できませんが、書痴を自認される方ならば挑む甲斐のあるミッションであると思います。我こそはと言う方の挑戦、お待ちしておりますw。

2014年1月26日