日本におけるベルアップ界の現状と課題

こんにちは、社会人一年目のクラリネット吹きです。

皆さん、ベルアップしてますか?あなたのベルアップ、本当に全力ですか?
私は昨年2月より「一橋大学クラリネット同好会」という演奏団体を立ち上げ、ベルアップ技法の確立と普及、またその可能性の追求に力を尽くして来ました。

本日の酔狂ブログでは、日本でなかなか知る機会の少ないクラリネットのベルアップについて、最新の技法や事例を交えながら解説していきたいと思います。

■ベルアップの定義とは?
ベルアップとは、「楽器と上半身を用いて90度以上の角度を形づくること」を指しています。
幾何学的観点から述べると鈍角以上の角度が求められることとなりますが、この理由については下の図を見ていただければわかりやすいかと思います。

良いベルアップの例。鈍角以上の角度が美しく形作られている。

良いベルアップの例。鈍角以上の角度が美しく形作られている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(写真2)良くないベルアップの例。70度程度ではトランペットと見分けがつかない。

良くないベルアップの例。70度程度ではトランペットと見分けがつかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

70~80度程度の上げ幅では金管楽器のデフォルト値とあまり変わらず、ベルアップのもたらす飛躍的な視覚効果・音の抜けが実現できなくなってしまうのです。

 
■ベルアップのポイント
「鈍角なんていっても、それじゃあ口の形が崩れて音が出ないよ…」
そんな悩みをお持ちのあなた、まだ諦めるのは早いです。一橋大学クラリネット同好会がまとめた「ベルアップ技法に関する報告書」によれば、鈍角以上の角度を実現するベルアップは以下の三つのポイントを押さえて練習するだけで、誰でも身につけられるとされています。

POINT1】ベルアップは’全身’で
プロ野球のピッチャーには強靭な足腰が不可欠なように、良いベルアップをするために必要なのは楽器を上げることのみに止まりません。
楽器を素早く上げる腕の動作はもちろん、同時にアンプシュアを崩さないよう角度調整を行う首まわり、のけ反っても安定した体幹を保つ上体、そして激しい動きを吸収し、芯のある音色を出す要となる下半身も重要です。

特に初心者が意識した方が良いのは首回りでしょう。

初心者は腕だけをあげてしまう。

初心者は腕だけをあげてしまう。

左の画像を見るとわかるように、腕だけを上げるとアンプシュアが崩れてしまい、これでは良い音を出すことは不可能です。

しかし下の例ではどうでしょうか。

 

 

 

 

 

首回りも合わせてのけぞることで、アンプシュアを崩さずにベルアップが可能となる

首回りも合わせてのけぞることで、アンプシュアを崩さずにベルアップが可能となる

 

こちらの例では首回りも合わせてのけぞることにより、アンプシュアを崩さずに高い角度を実現しています。

このように、見た目に鮮烈で、かつ安定した音を出すベルアップには、全身でベルを上げることが不可欠といえるのです。

 

 

 

 

【POINT2 恥を捨てる】
これは紛れもなく最も重要な項目となりますが、ベルアップの真髄は目立つことにあります。
視覚的な非日常性をわかりやすく表すとともに、金管楽器よりもヴィヴィットに突き抜けるような音を繰り出し、観客の注意を全て自分へと集中させることに意味があるのです。

 

【POINT3 まずは立奏から】
日本ではベルアップを「吹きにくい」からといって敬遠する奏者が多く、「吹きにくさ」のイメージから全国的にベルアップの普及が進んでいない現状があります。
しかし、本当にベルアップは「吹きにくい」のでしょうか?
常に音楽と向き合いながらベルアップを行う私たちは、こうしたイメージの根幹にあるのが、
座ったままベルアップ実践しか行ったことがないことであるという仮説にたどり着きました。

座ったままでベルアップを行うためには、後述のハーフサークルアプローチ(HCA)をはじめ、
高いレベルの技術が求められます。
はじめから座ベルアップ(ZBU)を行うのではなく、まずは広い部屋で、立奏で、
思う存分ベルを高く上げることで、ベルアップの醍醐味がご理解いただけるのではないかと思います。

立ってベルを上げれば、幸せが訪れる。

立ってベルを上げれば、幸せが訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ベルアップの実践例
ここからは、一橋大学クラリネット同好会で実際に活用されている事例をもとに、
ベルアップ技術の基礎から最新の技法まで、幅広く解説いたします。

ホリゾンタルベルアップ(HBU)
全てのベルアップの基本となる、90度の角度を形作るベルアップ。楽器と地平の間に平行の関係が生まれることからこの名前がついている。

・Schalltr. auf!
マーラーの譜面に度々登場する「ベルアップをしろ」という指示。バスクラを除くクラリネットセクション全体、もしくはクラリネット及びオーボエの2セクションに渡って指示される。

セクションの楽器が「打ち方始め!」といった勢いで一斉にベルを上げるのは壮観で、特に交響曲第九番の3度に及ぶベルアップは、マーラーの作曲した全交響曲の中でも最大の見せ場としてしばしば言及される。

 

・ハーフサークルアプローチ(HCA)

半円状の軌跡を描くことで譜面台を避けることができる。 そう、当たり前だ!

半円状の軌跡を描くことで譜面台を避けることができる。
そう、当たり前だ!

 

「ベルアップしたいけど、狭くて譜面台にベルを当てちゃいそう。。」
そんな時に活躍するのがハーフサークルアプローチだ。
譜面台を迂回するようにしてベルで半円状の軌跡を描くことで、どんな状況においてもベルアップが可能となる。

 

 

 

 

・トライアングルアプローチ(TA)
一橋大学クラリネット同好会によって提唱されているベルアップ技法の一つ。曲の決め所でベルの向きを「右→左→上」と次々に変化させることで三位一体の調和を現出させる。複数人で使用した時の破壊力は抜群だ。

 

 

・バスクラリネットベルアップ(BCB)
バスクラで行われるベルアップ。バスクラは管が曲がっている性質上極めて水滴の逆流を起こしやすく、実現は長い間不可能とされていたが、2014年1月に一橋大学の1年生が実現。大きな注目を集めた。
バスクラの巨体を生かしたベルアップは横から見た際のインパクトが並のクラリネットの比ではなく、特にトライアングルアプローチの実行時には破格の目立ちを見せる。ポイントは、「音を出したらすぐに口でリード締め付けて逆流を防ぐこと」らしい。

 

・バーティカルベルアップ(VBU)
上半身と楽器が作り出す角度を180度まで拡大し、真上に向かって音を解放する究極のベルアップ。
未だ研究中の技術ではあるものの、160~170度のベルアップは既に実用段階に入っており、方法論の確立が急がれている。

天を仰ぎ、空と一体となる。まさに究極のベルアップだ。

天を仰ぎ、空と一体となる。まさに究極のベルアップだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■次のベルアップへ

初めてベルアップをやったのは、吹奏楽やオーケストラの団体だったという方は多いでしょう。突然指揮者からベルアップをするように言われ、吹きにくいからあまりやりたくなく、恥ずかしがりながら本番。。
こうしたベルアップとの悲しい出会いをされた方が残念ながら少なくないのが、日本のベルアップ界の現状です。一橋大学クラリネット同好会は現在10名弱の会員を抱えておりますが、うち半数以上は最初から本格的なベルアップ経験があったわけではありません。

会の発足当初は上記の「ベルアップは吹きにくい」という苦手意識を抱えた会員も少なくはなく、
ベルアップ時の角度も60~70度程度の数字しか出せてはいませんでした。
しかし私たちは考えました。「自分に経験上、ベルアップそのものによって楽器が吹きにくくなることはない。
確かに座したままでのベルアップは下半身を活用しにくく、通常の演奏経験しかない奏者は身体が小さくまとまってしまいがちだ。
譜面台の存在や隣の奏者への気遣いも表現欲求を損なわせてしまっていた可能性もある。
しかし立ってベルアップすれば。もっと自由に身体を使ってくれたら。。?」
そこで私たちは「立奏ベルアップ主義」を掲げ、練習時のほぼすべての時間を立奏で、表現欲求を抑圧しない十分な広さの会場で行いました。
ベルアップの意義についても繰り返し伝え、複数人でベルの向きをそろえることの楽しさを伝えました。

するとどうでしょう。

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今回2月の演奏においては、すべての会員が「鈍角」のベルアップを達成したのみならず、

バスクラリネットベルアップ(BCB)やバーティカルベルアップ(VBU)の達成者や続出するなど、
目覚ましい成果をあげることができました。

以上、ベルアップの定義から最新の技術まで、かけ足で説明して参りました。
最後になりますが、一橋大学クラリネット同好会の最新の演奏動画を添付いたします。
みなさまのベルアップに関する興味関心が深まり、日本のベルアップ界が益々盛り上がることを祈念しております。

一橋大学クラリネット同好会 in アンサンブルカフェ2014winter